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1998年録音


○1998年3月16日ライヴ

ベートーヴェン:交響曲第4番

朝比奈隆指揮
新日本フィルハーモニー管弦楽団
(東京、サントリー・ホール)

テンポを遅めに取り、あまりテンポを動かさず、骨太な作りで男性的印象の演奏に仕上がっています。泰然としたスケールの大きさがあって、生気があるとか・推進力があるのというのとはまた違いますが、まあ曲には似合っているかも知れません。それにしてもやや古いタイプのベートーヴェンかなという印象がします。第1楽章序奏から展開部に入るところでの休止の間のながさなどは、どことなく歌舞伎の大見得の如くなのは、微笑ましく思えます。第2楽章は遅いテンポがますます遅く、リズムの打ち方が独特ですが、音楽が若干響き中心に流れている感じがします。第3・4楽章とも遅いテンポに、器の大きさが感じられるのは確かですが、音楽の生気というものにはやや遠いようです。


○1998年5月30日ライヴ

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

ケント・ナガノ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

全体にテンポ早めで、勢いに任せて一気に突っ走る感じの演奏です。特に第1部の中間部から終りまで、第2部のいけにえの踊りでの、たたみかけるようなリズムの激しさと鋭さは、若干荒削りな感じはするけれど、聴き手を興奮させるに十分です。ただテンポがちょっと速すぎで、オケを勢いにまかせて煽りまくった感じがあり、そこはベルリン・フィルだから持った演奏かなという感じはしますが。その意味ではベルリン・フィルの機能性が発揮されて、ライヴならではの熱い演奏に仕上がったと云えます。


○1998年6月14日ライヴー1

ベートーヴェン:エグモント序曲

朝比奈隆指揮
大阪フィルハーモニー管弦楽団
(大阪、フェスティバル・ホール)

同じ日の「運命」の方は遅めのテンポが成功していますが、「エグモント」の方はオケが乗り切っていません。特に冒頭の気合いが不足しているのが気になります。全体として緊張感の持続が足りず曲の悲劇性を十分に表現できていない。表情に締りが感じられず、遅めのテンポに風格を感じさせるまでには至っていないようです。


○1998年6月14日ライヴー2

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

朝比奈隆指揮
大阪フィルハーモニー管弦楽団
(大阪、フェスティバル・ホール)

冒頭のオケの乱れがありますが、大阪フィルも一生懸命頑張っています。リズムで構成された建築のような交響曲を、遅めのテンポでしっかりとリズムを刻み、訥々とした流れのなかからやがて重厚な風格が現れます。四つの楽章のバランスも良いですが、がっちりした構成感よりも流れ重視の感じで、リズムの推進力が犠牲になってることは致し方ないところですが、小手先で聞かせるのではなく、敢えて正攻法で押したところが成功した要因でしょうか。大阪フィルの音色も渋めで、ベートーヴェンによく似合っています。


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