(戻る)

1997年録音


○1997年ライヴ

プッチー二:歌劇「トスカ」

セミヨン・ビシュコフ指揮
ガリーナ・ゴルチェコヴァ(トスカ)、ネイル・シコフ(カヴァラドッシ)
ルッジェロ・ライモンディ(スカルピア)、ルイージ・ローニ(アンジェロッティ)
ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座)

全体として形はそれなりに整っており・目立つ不満はないのだけれども、ドラマが額縁に収まっている感じで、聴いていてドラマに興奮させられません。 良く言えば古典的ということなりますが、ビシュコフがテンポをインに取りすぎて、リズムを自在に揺らさないところにあるようです。旋律を息に乗せて歌わせていないということです 。もっと繊細微妙なリズムの揺れが欲しいと思います。これではフォルムとしてプッチー二の音楽の魅力を表出できているとは思えません。それが歌手にも波及しているようで、ライモンディならばもっと凄みのあるスカルピアが歌えても良いと思います。ゴルチェコヴァのトスカもえらく渋い印象がします。 高音はまあまあですが、もっと強い感情の迸りが欲しいと思います。


○1997年3月6日ライヴ

ブルックナー:交響曲第8番

朝比奈隆指揮
NHK交響楽団
(東京、NHKホール)

テンポをあまり揺らさず・しっかりとした足取りで、骨太な音楽を作っています。N響の響きが渋いこともあって・重厚な印象のブルックナーになっていて、手堅い出来であると思います。しかし、ブルックナーの魅力のひとつはふっとした色彩の揺らめきであると思うのですが、この点ではN響の色調は単調で・いまひとつブルックナーの面白さを引き出せていません。木管が弦の響きのなかから・木々の間から射し込む光のように響けばいいのですが。それと金管の響きが美しいとは言えないのも残念です。その遅めのテンポがスケールの大きさと・朴訥な雰囲気を生んでいるのはよろしいのですが。


〇1997年9月17日ライヴ

モーツアルト:モテット「踊れ喜べ幸いなる魂よ」 K.165、 R.シュトラウス:3つの歌曲 op.43〜第3曲「母親の自慢話」、8つの歌曲 op.49〜第1曲「森の喜び」、4つの歌曲 op.27〜第2曲「ツェツィーリエ」

ルネ・フレミング(ソプラノ独唱)
クルト・マズア指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
(ニューヨーク、エイヴリー・フィッシャー・ホール、クルト・マズア70歳記念ガラ)

モーツアルトのモテットでのフレミングの歌唱は端正で、特に第1部アレグロは古典的な格調を感じさせてなかなか見事なものです。第2部アンダンテも美しい表現ですが、その前のレチタティーヴォはやや平板で・もう少し砕けた感じがあって良かったかも。第3部アレルヤもテンポはやらず格調ある歌唱です。マズア指揮のニューヨーク・フィルも落ち着いた色調で触れミンギをサポートしています。R.シュトラウスの管弦楽付きの歌曲が3曲、まず「母親の自慢話」はちょっとマーラーの「角笛」的な感じなのが面白いがフレミングの歌唱はちょっと大人しめかも。「森の喜び」は美しいですが、これも表現としてはちょっと抑えめな感じ。しかし、最後の「ツェツィーリエ」はR.シュトラウスらしいスケールが大きい管弦楽の響きに乗ってフレミングが伸びの良い歌唱を聴かせます。最後の曲のために声を抑えていたのかも。マズア指揮のニューヨーク・フィルは手堅いサポートでなかなか良いです。


○1997年12月5日ライヴ

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

澤畑恵美(ソプラノ)、竹本節子(アルト)
若本明志(テノール)、多田羅廸夫(バリトン)
普友会合唱団
朝比奈隆指揮
新日本フィルハーモニー管弦楽団
(東京、すみだトリフォニー・ホール)

90歳を迎え新日本フィルの芸術顧問である朝比奈隆の第9はなかなかの好演です。前半の2楽章はゆったりとした遅めのテンポ。オケがこのテンポを持ちきれていない感じで、旋律にもう少し締りが欲しいところがありますが、反面、たっぷりおっとりした味わいがあります。第1楽章は渋めの音色がちょっとひと昔前のドイツのオケのようで、冒頭もフルトヴェングラー風の原始霧のようなのもそんな感じ。がっちりした構成感を感じさせると云うよりも、むしろ平面的なゆったりとした流れをイメージしているようなところがあり、おっとりしてやや生気に欠けるきらいもなくはないが、如何にもベートーヴェンが居間で正座している感じが何やら日本的ではあります。そう云う意味では、第2楽章はややおっとりし過ぎか。後半の第3〜4楽章はバランス上やや速めに感じられます。第3楽章は粘らず、むしろあっさりした印象ですが、これは悪くはありません。第4楽章はテンポを速めに取って、活気のある表現を目指しているようです。独唱、合唱は、もう少し弱音をデリケートに生かして欲しいが、まあ無難なところ。この楽章を頂点に持って行く設計であることはよく分かりますが、第1楽章とのバランスから考えると、もう少しテンポを遅めにしてスケールを大きく取った方が良いのではないかという考え方もあるだろうと思いますが、手堅くまとめる方向にやや意識が行ったのかも知れません。


○1997年8月13日〜18日

ショパン:ピアノ協奏曲第1番

ウラディミール・アシュケナージ(指揮とピアノ独奏)
ベルリン・ドイツ交響楽団
(ベルリン、イエス・キリスト教会、英デッカ・スタジオ録音)

アシュケナージの弾き振りによる演奏ですが、ピアニストとしての彼の・これがこの曲の初録音だというのは意外なことでした。「ショパンらしくない曲」だというので・弾くのをずっと嫌がっていたそうですが、何か心変わりすることがあったのでしょう。アシュケナー時のピアノはタッチが透明で美しく、第3楽章のリズムなど民族色も豊かで実に素晴らしいと思います。しかし、第1楽章では音楽がやや走り気味で・タッチが十分に粒立たない感じがあるのは、やはり弾き振りで・オケのコントロールに神経が行っているせいでしょうか。しかし、それでも十分に良い出来ですが。オケはドイツのオケらしい重厚は響きで、アシュケナージをよくサポートしています。


(戻る)