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1995年録音


○1995年1月20日ライヴ−1

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲

コリン・デービス指揮
バイエルン放送交響楽団
(ミュンヘン、ヘラクレス・ザール)

ちょっと遅めのテンポでロマンティックな演奏になっています。バイエルン放送響の響きはいくぶんくすんだ・渋い音色ですが、これがウェーバーの雰囲気にぴったりの感じです。特に木管の響きが素敵です。前半のリズムをやや重めに取り、展開部からはもやが晴れ渡ったかのように表情が生き生きとしてくる設計も見事で、重量感のあるオケの動きが楽しめます。


○1995年1月20日ライヴー2

メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」

コリン・デービス指揮
バイエルン放送交響楽団
(ミュンヘン、ヘラクレス・ザール)

バイエルン放送響の渋く・くすんだ音色と、重めに粘るリズムがいかにも重厚で・ロマンティックな味わいを醸し出しています。特に管楽器の音色が魅力的に感じられます。全体にテンポは重めで第1楽章は旋律の歌わせ方など・ちょっと表現が重く、冗長な感じがなしとしません。魅力的なのは後半で・第3〜4楽章においては重量感のあるオケの動きが、曲のダイナミックな魅力にスケールを与えているようです。


○1995年1月27日・30日

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲

ヨ―・ヨ―・マ(チェロ独奏)
クルト・マズア指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック
(ニューヨーク、エイヴリー・フィッシャー・ホール、ソニークラシカル・スタジオ録音)

ヨー・ヨー・マのチェロ独奏は、低音がやや不足に思えますが、中高音の音色が柔らかく温か味があって、抒情的な表現に重きを置いています。しかし、旋律をたっぷり感情込めて歌おうという意図は理解できますが、抒情的な場面になるとテンポが重くなって、音楽が粘ります。わざとらしい感じはないですが、例えば第1楽章第2主題になるとグッとテンポが落ちます。これがちょっと気になります。特に第2楽章では、この傾向が顕著です。マズアは、ヨー・ヨー・マのコンセプトによく合わせて、手堅いサポートを見せています。


○1995年5月5日、6日

ショスタコービッチ:交響曲第7番「レニングラード」

ウラディミール・アシュケナージ指揮
サンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団
(サンクト・ペテルブルク、英デッカ・スタジオ録音)

第2次世界大戦(対ドイツ戦)戦勝50周年記念日に合わせて録音されたものですが、そのモニュメンタルな意味を改めて考えさせます。「恩讐の彼方に」とい感じで、深い祈りと鎮魂の気持ちを強く感じさせる演奏になっています。特に弱音の部分において際立った表現で、旋律が静かに息深く、しかし沈痛な気分で深い哀しみを込めて唄われます。この印象が第2楽章・第3楽章と曲が進むにつれて、だんだん深くなっていきます。全奏部分においても鋭角的な刺々しい表現にはならず、どこか角が取れたマイルドな印象になっているのは、アシュケナージの意図だろうと思います。サンクト・ペテルブルク・フィルは、ムラヴィンスキー・レニングラードフィルの時代の硬質で引き締まった力強い高弦、輝かしく炸裂する金管など依然健在で、素晴らしい出来です。


○1995年6月20日ライヴ

モーツアルト:ピアノ協奏曲第20番

内田光子(ピアノ独奏)
ホルスト・シュタイン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

内田光子のピアノはタッチが粒立っており、音のひとつひとつにニュアンスが十分盛り込まれていて、自信と云うか、風格さえ感じさせます。テンポは心持ち早めに取り、表現があまり粘らないのも、良いと思います。過度に自分を押し出すわけでもなく、曲そのものを素直に提示する節度ある態度が、モーツアルトの場合はとりわけ大事であることを痛感させられます。旋律が息深く歌われるので、テンポが遅くなるとなおさらその良さが出て来る感じで、第2楽章はしっとりと落ち着きのある、実に味わい深い演奏になりました。シュタイン指揮ベルリン・フィルはしっかりと安定したサポートを聴かせますが、時に響きが厚いと感じさせる場面があり、もう少し軽やかさを求めたい気がしますが、第3楽章などソロとの息が良く合って良い演奏に仕上がりました。


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