(戻る)

1961年録音


○1961年1月17日

モーツアルト:ピアノ協奏曲第24番

ワルター・ジュスキンド指揮
グレン・グールド(ピアノ独奏)
CBC交響楽団
(トロント、マッシー・ホール、CBSスタジオ録音)

恐らくグールドは当時のピアノの性能を考慮したのでしょうが、タッチを柔らかく、音量の変化を抑えて、ダイナミクスを最小限に抑えた演奏をしています。その結果、華やかさは控えめに 、内省的なモーツアルトに仕上がりました。それがこの曲のちょっとシリアスな要素によくマッチしています。特に第2楽章のゆったりしたテンポの密やかともいえる、落ち着いた風情は、ちょっと忘れ難いものがあります。 ジュエススキンドもグールドの解釈をよく理解して好サポートだと思います。


○1961年2月5日ライヴ

ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番

フェレンツ・フリチャイ指揮
ベルリン放送交響楽団
(ベルリン、自由ベルリン放送協会大ホール)

芝居っ気のある表現を意識して排除しているようなところがあり、オペラの序曲というより、交響詩的な演奏ですが、密度が高く、純音楽的に引き締まった表現であると思います。


〇1961年7月

チレア:歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」

レナータ・テバルディ(アドリアーナ・ルクヴルール)、マリオ・デル・モナコ(マウリツィオ)、ジュリエッタ・シミオナート(ブイヨン公爵夫人)、シルヴィオ・マイオニカ(ブイヨン公爵)、ジュリオ・フィオラヴァンティ(ミショネ)
フランコ・カプアーナ指揮
聖チェチーリア音楽院管弦楽団・合唱団
(ローマ、聖チェチーリア音楽院、英デッカ)

とても密度が高い名演に仕上がっていますまずテンポ早めに直線的に曲を処理したカプア―ナの指揮がとても見事です。緊張感が持続して、幕切れまで息もつかさずドラマが展開して行きます。聖チェチーリア音楽院管は弦の艶やかさが素晴らしく、リズム感がとても良いです。管弦楽が良くないと、この曲の良さは半減です。主役三人もこれ以上は望めないほどに素晴らしい。特にアドリア―ナ・ルクヴルールのテバルディは気合いが入って、特に高音の伸びが素晴らしい。声の輝き・張りとも申し分なく、聴き手をぐいぐいドラマへ引き込みます。恋敵役のブイヨン公爵夫人のシミオナートも素晴らしく、二人の対決は手に汗を握ります。デル・モナコのマウリツィオも高音が良く伸びて声が輝かしく、とても魅力的です。


○1961年11月14日ライヴ

デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」

フェレンツ・フリチャイ指揮
ベルリン放送交響楽団
(ベルリン、自由ベルリン放送協会大ホール)

リズムはとく切れていて、生きの良い表現ですが、フリチャイはあまり情景描写には関心がないうようで、洒落っ気に欠けるところがあります。純器楽的に表現に徹していて、早いテンポでさっさと済ませる感じで、もう少し遊びが欲しいところです。


 

(戻る)