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1958年録音


○1958年-1

R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」

ポール・トゥルトゥリエ(チェロ)
ルドルフ・ケンペ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、EMI・スタジオ録音)

いかにも正調のR.シュトラウスという感じの演奏です。このいささかまとまりが良いとは言えぬ交響詩を散文的に淡々と語りつづったという感じで、曲の展開を一気に聴かせるという感じではないので 、やや語り口がもたれる感じがなきにしもあらず。トゥルトゥリエのチェロも指揮者同様に生真面目な感じです。


○1958年−2

ハイドン:交響曲第45番「告別」

ヘルマン・シェルヒェン指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
(ウィーン、ウィーン・コンツェルトハウス・モーツアルト・ザール、米ウェスト民スター・スタジオ録音)

第4楽章では演奏中に奏者がひとりひとり無言で立ち去るのが普通ですが、録音であるとその面白さが出せないと言うので奏者が「Aufwedersehen」と声を出して立ち去るという趣向が面白いところです。全体としてはモーツアルト的な感触があり、ちょっと暗めの音色の第1楽章がやや重めながらなかなか良い出来です。


〇1958年4月3日

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

コンスタンティン・シルヴェストリ指揮
パリ音楽院管弦楽団
(パリ、仏EMI・スタジオ録音)

シルヴェストリが、オケの個性を巧みに引き出していると感じます。パリ音楽院管の木管と弦の柔らかい歌いまわしが実に美しく甘い雰囲気が漂って、良い意味において云うのですが、如何にもこの曲の通俗的なかつムーディな印象をそのイメージ通りに描き出して、音楽の流れにゆったりと身を任せられる、聞いていてとても心地良い演奏です。


○1958年9月24日、25日

マリア・カラス:「狂乱の場」
ドニゼッティ:歌劇「アンナ・ボレーナ」第2幕〜「あの方は泣いているの、私の生まれたあのお城」、トーマ:歌劇「ハムレット」第4幕〜「皆様のお楽しみに、さあ私の花を分けて差し上げましょう、それでは私の歌をお聴きくださいまし」、ベルリー二:歌劇「海賊」第2幕〜「ああ目の前にかかる雲を、その無心の微笑で」

マリア・カラス(ソプラノ独唱)
二コラ・レッシ―ニョ指揮
フィルハーモニア管弦楽団
(ロンドン、キングスウェイ・ホール、英EMIスタジオ・録音)

レッシーニョのサポートは手堅くまとめて、オペラのツボを押さえた職人芸的な上手さを聴かせます。装飾的な技巧が際立つベルカント・オペラでは、どうしても歌唱の表面的な美しさの方に耳が行ってしまい勝ちですが、その華美な装飾のなかに、実は主人公の引き裂かれた心情が秘められていることを明らかにしたのは、マリア・カラスです。カラスの技巧の見事さは云うまでもないですが、むしろカラスに特徴的なのは、この声の音色にあるのではないでしょうか。カラスの声色は全音程において均質なわけではなく、むしろ高音はちょっと喉を絞ったような感じがしますが、カラスは声の色合いの変化で、音符の裏側に秘められた心情の裂け目に、鮮烈に印象付けてくれるのです。そのようなカラスの本領がはっきり分かるのが、この「狂乱の場」のアルバムです。どの曲でも、カラスの卓越した表現力に耳を奪われるばかりです。


 

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