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バーンスタインの録音 (1990年)


○1990年2月、3月ライヴ

ブルックナー:交響曲第9番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン楽友協会大ホール、独グラモフォン・ライヴ録音)

バーンスタインとブルックナーは縁が遠いと思いますが、ウィーン・フィルを振っているせいか、思いの外オーソドックスな演奏であると感じられました。ウィーン・ふぃるの自発性に身をゆだねた印象で、強引なところはまったくありません。第1楽章はテンポを微妙に緩急つけながらも表情は自然で、ウィーン・フィルのしなやかな高弦が美しく、しっとりした情感が味わえます。第2楽章はテンポがちょっと遅めで、重い感じがあります。全体から見たバランスからすると、もう少し軽めの感覚が欲しい気がします。第3楽章もテンポは遅めですが、こちらは変化する曲の色合いを味わうような足取りで、これはそれなりの出来であると思います。


○1990年8月19日ライヴー1

ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」〜四つの海の間奏曲

ボストン交響楽団
(タングルウッド)

テンポを遅めに重く取って、ボストン響の暗めの音色が、厚い雲に覆われて寒風が吹き荒ぶ北海の暗い海を思わせて、なかなか見事な出来です。特に印象的なのは、第2曲「日曜日の朝」、第4曲「嵐」のリズム処理の巧さです。


○1990年8月19日ライヴー2

ベートーヴェン:交響曲第7番

ボストン交響楽団
(タングルウッド)

バーンスタインの最後の演奏会の記録ですが、そう思って聴くせいもありますが、このベートーヴェンの演奏には、バーンスタインの疲れが聴こえる気もします。しかし、バーンスタインは最後まで頑張ってしっかり振ってはいます。ただ時々アレっと思う箇所でテンポが微妙に揺れる場面が散見されます。第1楽章は若干速めのテンポで歯切れよく始まりますが、中間部辺りでテンポが落ちて表現が重くなっていきます。第2楽章はもともとテンポが遅いから目立ちませんが、流れが停滞する感じがします。第3〜4楽章も全体にテンポが重く躍動感に欠けるところがあり、聴いていて頑張れ・頑張れと言いたくなってきますが、最後まで見事に振り切った気力には敬意を表したいと思います。


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