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バーンスタインの録音 (1985年)


○1985年5月29日〜6月3日ライヴ

マーラー:交響曲第9番

アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団
(アムステルダム、コンセルトへボウ音堂、独グラモフォン・ライヴ録音)

テンポは79年のベルリン・フィルとの演奏よりずっと遅くなっています。コンセルトへボウ管の音は弦が透明で柔らかいのが魅力的で、テンポが遅くても・音楽が粘らず重くならないのが素晴らしいと思います。旋律はニュアンス豊かに歌われ、バーンスタインの意図がよく反映されていると思います。特に第2・3楽章のリズムの活力のある楽章でオーケストラのダイナミックで軽やかな動きが楽しめます。ただバーンスタインのマーラーの捉え方は基本的にネアカであって、テンションは高いのですが・健康的に過ぎる感じがします。第1楽章や第4楽章はじっくりと情感豊かに演奏されていて・フィナーレの弦のピアニシモなどは息が詰まるようであり・それ自体に不満はないのですが、その美しさの果てにある感性の歪みのようなものまでは見えてこないのです。そうしたロマン主義の延長線上にマーラーを見るのならば十分に美しい演奏ではありますが。


○1985年11月3日ライヴー1

シューマン:劇付随音楽「マンフレッド」序曲

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン音楽友協会大ホール、カール・ベーム追悼演奏会)

テンポを早めに取って・疾走するようなオケの動きが緊張感と悲劇性を高めますが、その一方でリズムの打ち方がやや浅く・聴き手を急き立てるような感じがないでもありません。このテンポでは旋律が十分に息長く歌えず・感銘が薄くなるのはやむを得ないところです。バーンスタインは気合いが入っていて・時折りうなり声を上げています。ウィーン・フィルはバーンスタインの棒によくついていますが、弦は線が強過ぎてキンキンする感じが若干します。


○1985年11月3日ライヴー

チェロ協奏曲

ミッシャ・マイスキー(チェロ独奏)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン音楽友協会大ホール、カール・ベーム追悼演奏会)

マイスキーのチェロはやや細身で低音が不足の感じですが引き締まった音で・中音域はまろやかで豊かな響きです。素晴らしい技巧を生かして・まるでヴィオラのように軽やかで口当たりが良い音楽になっていると思います。しかし、巧過ぎると言って不満を言うようですが・何となくこの楽器が持つ不器用な魅力が生きてこない感じもします。全体のテンポは早め。オーケストレーションに難点があるせいか・オケの印象が淡く・全体としては薄味な感じの演奏に思えます。


○1985年11月3日ライヴー3

シューマン:交響曲第2番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウィーン、ウィーン音楽友協会大ホール、カール・ベーム追悼演奏会)

バーンスタインはシューマンの交響曲では第2番を最も好んでいたと思いますが、それも納得できる力演です。リズムがきびきびしていること・高弦の旋律線がきつい感じがしますが、活気がある演奏に仕上がっています。全体を早めのテンポで引き締めています。特に前半第1〜2楽章はウィーン・フィルの斬れのある見事な演奏を見せます。バーンスタインは要所要所でテンポを微妙に動かし・音楽にメリハリをつけていますが、それもわざとらしさがなくて・自然に感じられます。ロマンティックな柔らかい感触より、さらりとして・爽やかなラテン的感性を感じさせるところにバーンスタインの特徴があるのだと思います。


○1985年11月25日〜12月3日ライヴ

マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

ニューヨーク・フィルハーモニック
(ニューヨーク、エイヴリー・フィッシャー・ホール、独グラモフォン・ライヴ録音)

バーンスタインらしく熱くのめりこみの強い演奏です。まったくバーンスタイン的な世界であるといえます。響きが濃厚で、リズムがずっしりと重めです。これは両端楽章において顕著です。ニューヨーク・フィルはバーンスタインの意図をよく理解して、緊張感ある演奏を展開しています。旋律はねっとりとしたテンポで濃厚に歌い上げられ、時としてリズムは叩き付けるように鮮烈です。この両端楽章は聴きものですが、過剰なくらいにロマンティックな解釈だと思います。熱い主張はありますが、引き裂かれるようなアンビバレントな感情は聴こえてきません。この演奏の問題は中間の3楽章にあるかも知れません。この交響曲全体をロマンティックな流れの上に捉えており・第3楽章の舞曲風リズムもワルツへの憧れを熱く歌うのですが、それがワルツになり切れないことの哀しさは聴こえて来ません。その辺りがバーンスタインのマーラーの評価の分かれるところかと思います。第4楽章の夜曲も確かにここに安らぎはあるのですが、実はマーラーは眠れないのではないか・と感じさせるところがバーンスタインの演奏ではありません。しかし、第5楽章冒頭のリズムの刻み方など興味深い箇所が随所にあり、聴く価値がある演奏であることは間違いありません。


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