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アバドの録音 (2009年)


○2009年8月30日ライヴー1

マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌曲

マグダレーナ・コツェーナ(メゾ・ソプラノ)
ルツェルン祝祭管弦楽団
(ルツェルン、ルツェルン・コンサート・ホール)

コツェーナの歌唱は声量がちょっと不足です。その欠点が顕わになるのは第3曲「真夜中に」で、スケール不足で・しばしば管弦楽に声が押されます。よく言えば小振りで繊細な歌唱ということも出来るかも知れませんが、それならばもう少し言葉・特に子音を正確に発してもらいたいものです。他の曲も含めて、響きの美しさに頼り切った感じで、感銘が弱いのっぺりとした平坦な歌唱です。アバドはこういう合わせ物は得意な人ですが、ここでは管弦楽の音量を抑え込めていません。


○2009年8月30日ライヴー2

マーラー:交響曲第4番

マグダレーナ・コツェーナ(メゾ・ソプラノ)
ルツェルン祝祭管弦楽団
(ルツェルン、ルツェルン・コンサート・ホール)

アバドはマーラーを得意にしているので・もちろんこの演奏も解釈は素晴らしいものであるし、安心して聴けますが、このオーケストラは各奏者腕利きを集めていますが・所詮は寄せ集めオケの限界で、響きがこなれていない感じがします。弦の響きがどこかザラザラと粗い感じがしますし、木管・特にクラリネットがとてもバランスが悪い感じ(それ自体悪いわけではないのですが、どうも細身の弦セクションの響きに似合わない太めで重い響きである)で、このような静かで清浄な雰囲気の交響曲の場合はどうも音楽に ゆったり浸れません。第4楽章でのコツェーナの歌唱は前プロで触れた通りで、声量がない分・声を張り上げるようなことをしないのは良い点で、小振りで語りかけるような感じに聴こえるのでまあまあの歌唱に聴こえますが、歌唱としては言葉が粒立たず・あまり良い出来とも思えません。前半の出来はまあ納得できるところですが、圧倒的に素晴らしいのは第3楽章で、ここではゆったりとして・時に停滞するかと思うような・揺れる感覚をアバドは正しく表現 しています。こういうところを聴くとさずがにアバドだと思いますが、全体としてはいまひとつ残念な出来に終わりました。


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