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アバドの録音 (2008年)


○2008年8月22日ライヴー1

チャイコフスキー:幻想序曲「テンペスト」

ルツェルン祝祭管弦楽団
(ルツェルン、ルツェルン・コンサート・ホール)

豊穣な響きのベルリン・フィルとの録音(94年)とかなり違った印象です。ルツェルン祝祭管の響きは低音を抑えた乾いた響きで、特に高弦の力強さが耳に付きます。シェープされた造型のなかに荒涼とした風景が見えてきます。愛の主題も甘さを抑えて、直線的に歌い上げており 、そこに悲壮感が湧き上がって来ます。嵐でのオケの動きも見事で、緊張感に満ちた好演です。


○2008年8月22日ライヴー2

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

エレーヌ・グリモー(ピアノ独奏)
ルツェルン祝祭管弦楽団
(ルツェルン、ルツェルン・コンサート・ホール)

前曲「テンペストの演奏」を聴くと、次のラフマニノフは甘さを抑えたシェープされた演奏を予想しましたし、アバドが珍しくこの曲を取り上げた意図はそこにあると思いましたが、 結果としては一般のロマンティックなこの曲のイメージを裏切らない無難な演奏でした。グリモーのピアノの個性に合わせたということかも知れません。グリモーのピアノは女性らしく・タッチが柔らかく て端正ですが、全体にオケに押され気味の感じがあって、ロマンティックではありますが・メランコリックな感じがあまりしません。テンポの揺れ(急に早くなるとか)・タッチの鋭さ(低音あるいは高音のアクセント)が足りないので、ラフマニノフの精神の揺 らぎが聞こえてきません。そのせいかアバドの指揮も自然と抑え気味になったようで、強い主張はあまり聞こえてこないようです。


○2008年8月22日ライヴー3

ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」

ルツェルン祝祭管弦楽団
(ルツェルン、ルツェルン・コンサート・ホール)

アバドらしいシェープされた造型と、鋭敏なリズム処理が見事です。ルツェルン祝祭管の透明で・軽やかな響きが幻想的な雰囲気によく似合っています。「魔王カスチェィの兇悪な踊り」や「終曲」は重量感よりも音楽の斬れで聴かせるので、幻燈による絵物語を見ているような気分にさせられます。


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